八戸工業大学と八戸市立市民病院は、患者の救命率と社会復帰率の向上を目的とし、2012年に医工連携を開始しました。
八戸市立市民病院 CEO
今 明秀
本州最北端の大間町で発生した重症外傷患者が、3時間をかけて陸路搬送されたものの、当院到着直前に心停止となった事例があった。
これまで、発生現場から10km以上離れた遠隔地で発症した心肺停止患者において、良好な機能予後が得られた症例は、現場でAEDによる除細動に成功した例、あるいはドクターヘリで搬送後に体外循環(ECMO)を導入して救命できた例に限られていた。
へき地で発生した重症出血性ショックや、AEDでは蘇生できない心肺停止患者を救命するためには、手術装備とECMOを搭載した車両で救急医が現地へ赴き、現場近くで緊急手術を行うことが必要であると考えた。そこで、2012年に八戸工業大学と共同で、その構想を実現する「移動緊急手術室」の開発に着手した。
2014年には試作車1号および2号による実証実験を実施した。2015年には試作車3号による実験を行い、同年に当院倫理委員会の承認を取得した。10月には3号車が完成したが、11月には青森県から医療法への抵触の可能性を理由として運用延期の通知を受けた。
その後、2016年2月23日の衆議院総務委員会において、ドクターカー内での手術実施の可否について議論が行われた。6月には厚生労働省から運用を認める見解が示され、同年7月より本格運用を開始した。
都市部における病院前ECMO(ECPR)の報告は存在していたが、へき地・地方での導入に対しては否定的な意見も少なくなかった。そのような状況の中で、私たちはへき地医療の限界に挑み、移動緊急手術室による新たな救命医療の実現に向けた取り組みを開始したのである。
移動緊急手術室は、救命の地域格差を克服するための挑戦として始まり、現在も進化を続けている。
学長 船﨑健一
私たちの生命を守る医学や医療技術は日々進化・高度化していますが、八戸工業大学のような理工系大学も医学の進展を支える重要な役割を担っています。八戸工業大学では,地域の高度医療の中核的医療機関である八戸市民病院と連携して,地域の多様な医療ニーズに応えるための新たな取り組みに挑戦し続けています。例えば,
移動型緊急手術室ドクターカーの開発
PCR検体採取ボックスの開発
ドクターカーサイレン音に関する研究とYELPサイレン(緊急車両音)の社会実装
患者搬入時間短縮のための病院敷地内救急車導線および横断歩道の研究
などがその例です。
八戸工業大学と八戸市民病院との医工連携事業を広く学内外の皆さんに知って頂くため,この度本学のHPに紹介用ページを開設いたしました。今後このページに掲載する情報を通じてこの連携事業のみならず,両機関への理解を深めていただけたら幸いです。
八戸工業大学 工学部 工学科 教授 浅川 拓克
八戸工業大学と八戸市立市民病院による「医工連携」の共同研究は、2012年にスタートいたしました。本プロジェクトの共同責任者を務めております、浅川 拓克と申します。
本連携の原点は、2011年の東日本大震災にあります。未曾有の災害を経験し、「地域の命を守る医療現場を、工学の力で支えたい」という強い想いから、翌年にこの活動が産声を上げました。
以来、医療現場の切実なニーズと本学の技術力を結集し、医療機器の改善や業務効率化など、地域医療に貢献する具体的なものづくりに邁進してまいりました。
今後も、医療従事者の皆様と知恵を絞り合い、地域の皆様が安心・安全に暮らせる未来を築くとともに、次世代を担う技術者の育成に努めてまいります。未来へつなぐ私たちの挑戦に、どうぞご期待ください。